奄美の大本命、フェリエベニボシカミキリ。
1年次の夏、先輩の採ったフェリベニを見てから3年・・・大学での虫採り、最後の挑戦だ。
天気は最高・・・。
今回は、皆さんから色々な情報、アドバイスを頂いての出撃ということもあり、これで採れなければ、どうしようもない。覚悟を決めて、採集初日から、勢いよく林内へ突撃。
フェリベニの採集は、作業そのものは単純明快。山を歩き回り、良い木を探すことだ。しかしこれが難しい・・・西表での経験をフルに活かしても、なかなか良い木を見つけることはできない。
樹の古さや、菌糸の状態、湿度、周囲の開け具合等など・・・
森の中は、だいたいどこも同じ景色に見える。そこを掻き分けて入っていくわけだから、当然迷うこともある。エゾミヤマが近くにいるときは彼の秘密兵器GPSが効果を発揮しているが、一人で探していると何度か道に迷うことがあり、恐ろしい思いをした。
物凄い急坂を降りて沢沿いを探索したり、はたまた尾根沿いを歩いたり・・・。環境を変えて広範囲を歩き回ること4日間。フェリベニはま~~~~ったく採れる気がしない。
この採集の敵は暑さだけではない。一番イヤなのはブユやアブなどの吸血昆虫だ。集中力もなくなるし、痛いしかゆいしで、たまったものではない。
5日目。私もエゾミヤマもこの採集に疲れきってしまい、今日で採れなければ翌日(最終日)はネキを採りに別のエリアに行こう、と言い出す始末。この日はネキの大きい個体が採れたこともあり、楽しい吹き上げに心が移りつつある。
気合を入れなおし、谷に降りて良い木を探していく。倒木の周りにはホソハナやヨツスジ、キタコガネなどが飛び回り良い雰囲気。しかし本命の姿はない。
急斜面を歩き回って滑落したりと、疲れ果てて林道へもどると、スミナガシが優雅に(?)お食事中だった。日本のチョウの中でも指折りの、渋い美しさのある種類だと思う。
周囲を行ったりきたりして、束の間疲れを忘れさせてくれる。
既に午後1時を過ぎ、暑さと疲れはピーク。休憩するというエゾミヤマと別れ、重い荷物は全て車において最後の一巡。皆さんのお話によると、フェリベニはベニボシに比べて、やや古い材を好むようだ。そのような樹を重点的に探していく。
林内は既に乾燥がかなり進んで、厳しい状況だ。
目をつけていた立ち枯れや倒木を、隈なく見て回るが・・・やはりダメ。「今年もフェリベニは採れなかったか・・・」と思いながら、車に戻る。最後に、るどるふさんおススメのエリアを通りぬけて帰ろうとした、その時だった。
古い立ち枯れの根本を歩く、探し求めたカミキリの姿が目に飛び込んできた。
「うぉおおおおおおお!!!!フェリベニいた!!!」
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息を呑む、とはまさにこの事。見つけて一瞬硬直し、それから思わず叫んでしまった。なんという綺麗な虫だろう。ベニボシの深い赤とは随分印象が違う、鮮やかな橙色。しかし浮いているわけではなく、奄美の森の一部として、調和した美しさだと感じた。
車に戻り、エゾミヤマに報告していると、「あ、フェリベニ本当に採れたんだな」という実感がわいて、嬉しさがこみ上げてくる。
この日の夕飯は、「ひさ倉」で美味い鶏飯。この念願もついに叶えられたなー。
翌日、幸運にも別のエリアでもう1♂得ることができた。25mm程と決して大きくはない個体だが、今シーズン最も大きな喜びを与えてくれた虫となった。前記事と重なるが、フェリベニの採集に関しても多大なご助言とチャンスを頂いた皆様に、改めてお礼を申し上げたい。ありがとうございました!
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これで、日本産Rosalia3種と出会えた事になる。3種それぞれに最高の思い出がある。初めてルリボシを採ったときの感動からフェリベニまで・・・長かった・・・。
「ありがとう・・・本当に・・・ありがとう・・・それしか言う言葉が見つからない・・・」
ベニボシカミキリ:2013年5月 西表にて
ルリボシカミキリ:2007年7月 山梨にて